活動報告
【道議会報告】平成29年度6月6日 水産林務常任委員会質疑概要~林業人材育成の今後のあり方について
2017年6月7日
林業人材育成の今後のあり方について
北海道における林業労働力の確保の促進に関する基本計画が
3月に策定されたと承知をしています。
その計画に関連して、まず、お聞きします。
1 林業労働力の動向などについて
① 新規参入者について
平成27年度は185名、平成25年度から40名が増加、39歳以下の若年層が約6割を占めている。
増加の要因には、伐採量の増加が指摘されているが、新規参入者の動向について、より詳しく伺いたい。
どんな分野に多かったのか。雇用形態はどのようなものか。地域に特徴はあるのか。
また、彼、彼女らが、林業に新規参入にいたった動機について把握されていれば、うかがいたい。
(回答)
道が実施している「林業労働実態調査」では
平成27年度、185名が新たに林業事業体に就業しており
このうち、分野別では、素材生産が87名、造林が87名、種苗生産が11名で、
素材生産と造林を行う事業体への新規参入者が多くなっている。
また、雇用形態では、通年雇用が103名、定期雇用が82名で、
通年雇用の割合が6割を占めており、地域別に見るとオホーツク管内が46名と最も多く、
続いて、上川管内が28名、十勝管内が18名と、
林業生産活動が活発な地域で新規参入が多い状況にある。さらに、道が平成28年度に実施した
新規参入者を対象とした研修の際の調査では、
林業に就業した理由については、
・自然や森林に関する仕事に興味があった
・イベントや学校の授業で興味を持った
という回答が、併せて約6割を占めている。
② 新規参入者の離職について
一方で新規参入者の2割が離職されたとのことだが、その要因はどのように把握されているのかうかがいます。
(回答)
道では、「林業労働実態調査」において、
就業の初年度に離職した人数とその要因について調査しており、
平成27年度は、新規参入者185名のうち、
2割に相当する43名が年度内に離職している。
③ 新規参入者の確保・定着のための林業インターシップのとりくみについて
新規参入者の確保、定着には、ミスマッチを防ぐためにも、事前のいわば、
インターシップ的なとりくみが、林業においては、とりわけ重要だと考えるところだ。
道としては、これまで、緑の雇用などとも呼応して取り組んできたと承知をしているが、
これまでの取り組みの実績とそれによる成果はどのようになっており、
今後に向けてどのような課題があると認識し、今後、新たにどのように対応する考えかうかがいます。
(回答)
道では、北海道森林整備担い手支援センターと連携して
国の「緑の雇用現場技能者育成推進事業」を活用し、
本格就業の前に仕事を体験できる「トライアル雇用」に取り組んでおり
平成24年度から5年間で106名が受講し、
41名が就業しているところ。また、道では、農業高校の森林科学科の生徒などを対象に
高性能林業機械の現場体験学習などを実施し、
平成24年度から5年間で592名が参加したほか、就業希望の生徒を対象としたインターンシップの実施や
相談会の開催など、道内5地域の地域協議会の取り組みに支援しており農業高校の森林科学科の生徒が
林業関係の企業などに就業した割合は、
平成24年度の約26%に対し、平成28年度は約45%と増加している。道としては、林業事業体と就業希望者とのマッチングなどを進め、
森林づくりを支える人材の育成と確保を図ることが課題と考えており、引き続き、トライアル雇用やインターンシップの実施などに
取り組むとともに、今年度から新たに、林業の就業体験プログラムや
インターネットなどを活用した効果的な情報発信を行うなどとして
新規参入者の確保、定着を着実に進めてまいる考え
④ 山村地域の活性化及び住環境の整備について
地方において、生産年齢人口の減少、労働力不足が課題になっているなか、
森林整備を担っていく人材を確保するためには、いわゆる狭義の林業の活性化だけではなく、
この計画において、最後に、その他として記載されているとおり、
「森林から生産される特用林産物等の活用や森林そのものを活用した体験ツアーなどの
新たな産業づくりを通じて、就業機会を創出し山村地域の活性化を図ることが非常に重要である」と、
私としても、考えるところだ。
全国的な先進事例を見ると、例えば西粟倉村など、とても小さな単位ではあるが、
建築、家具、手工芸が洗練されたデザイン性などもあいまって、都市部でも評価され、
結果として、林業人材の獲得にもつながっているのではないかと推察している。
もちろん、労働安全衛生、労働条件の改善は、どの業界にあっても重要であるが、
地域の特性を活かし、狭義の林業のわくを超えた、
森林・林業再生の人材育成のあり方があってもよいのではないかと考えるが、
道内の市町村自治体の先進事例をどのように把握され、どのように評価し、
広域自治体としては、どのように支援すべきと考えるかうかがいます。
(回答)
道内における地域の特性を活かした取り組みについては、
中川町と企業との連携による道産広葉樹の家具製造や、
陸別町の町産材住宅の建設による移住環境の整備といった事例を把握しているところであり
こうした取り組みは、林業・木材産業の振興はもとより、
山村地域の活性化を図る上でも最も重要と認識。このため、道としては、今後とも、関係各部の連携のもと
国の「山村活性化支援交付金」の有効活用を図り、
市町村を支援するとともに都市部から山村地域に移住した方が
「地域おこし協力隊」として
林業・木材産業などへの従事や
地域ブランド・地場産品の開発に取り組む事例のPRに努めるなど
地域の森林資源を活かした山村地域の活性化と
これを支える人材の育成につなげてまいりたい。
⑤ 森林・林業に関する理解の促進について
計画のさらに、最後に、森林・林業に関する理解の促進について記載されているとおり、
「近年、職業に対する意識が多様化し、自然の中で働きたいという想いなどから
林業に新規参入する若者が増えてきており、こうした動きに支援していくことが大切である」
さらに、
「広報活動や学校教育、地域における木育活動などあらゆる機会を通じ、
小学生を含め小さな頃から森林・林業についての理解を深め、身近なものとして認識してもらう」
などのとりくみも非常に重要である。
林業大学校など、若年者、社会人等に対しての対策も重要であるが、
私としては、学齢前、学齢期からの対策が重要であると考えるところだ。
長野県、鳥取県においては、いわゆる「森のようちえん」が、自然保育として、
制度化されたが、北海道においては、まだ、制度化にいたっていないのが現状だ。
道内の「森のようちえん」についても、木育発祥の地の北海道こそ、
林業人材育成の先行投資として、明確に位置づけられるべきと考えるが、
この間、議論を重ねてきたところではありますが、
改めて、道としての認識をうかがいます。
(回答)
森林や木材にふれ親しみ、道民の豊かな心を育む
「木育」を推進することは、森林づくりの理解の促進や
森林づくりを支える人材の育成につながるものであり、乳児や幼児の自然体験活動を通じた子育てや保育、
教育を進めるいわゆる「森のようちえん」の取り組みにも
資するものと考えている。道としては、農業高校の生徒が行う
幼稚園児を対象とした木育教室や、
NPOが取り組む幼児から幅広い年齢を対象とした
木育プログラムの実施などに支援しているところであり、今後とも、こうした取り組みに加え、
「森のようちえん」において指導的な役割を果たすことができる
木育マイスターの育成を進めるなど
森林・林業に関する理解の促進に努めてまいる考え。