【道外調査報告】人口減少を「縮む話」で終わらせないー熊本・佐賀に学ぶ、地域課題を新しい価値へ変える「共創」の力
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人口減少を「縮む話」で終わらせない
7月28日に発生した「令和8年熊本地震」により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
今回ご紹介する熊本県への視察は、地震発生前の7月14日に行ったものです。現地でお世話になった皆さま、そして被災された地域の一日も早い復旧・復興を心より願いながら、今回の視察で学んだことをご報告します。
―熊本・佐賀に学ぶ、地域課題を新しい価値へ変える「共創」の力―
熊本北海道議会「人口減少問題・地方分権改革等調査特別委員会」の道外調査で、熊本県と佐賀県を訪問しました。
人口減少というと、ともすれば「人口をどう増やすか」「若者をどう引き留めるか」という議論になりがちです。
しかし今回の視察を通じて改めて考えたのは、人口が減ることを前提としながらも、地域にある課題を新しい価値や仕事に変え、そこで挑戦する人を育て、支える仕組みをどうつくるかということでした。
そしてもう一つ。地域づくりや経済を支える土台として、自然環境をどう守り、次の世代へ引き継ぐのか。この二つは別々の政策ではない、ということも大きな学びでした。
■熊本大学――地域課題に挑戦する「かっこいい大人」を育てる

熊本大学では、金岡省吾教授から「地域未来創造塾」をはじめとする地域連携戦略について伺いました。
特徴は、大学の中で知識を学ぶだけではなく、実際に地域へ入り、現場で課題を知る実践型の学びです。
自治体、住民、企業、金融機関、大学などが、人・もの・資金、そして活動のフィールドを持ち寄り、地域課題の解決と新しい事業の創出に取り組みます。
対象も大学生だけではありません。社会人のリカレント教育やリスキリング、高校生、小中学生へと広がっています。
そこで育てようとしているのが、地域課題に挑戦し、新しい価値をつくる**「ローカルイノベーター」**です。
印象的だったのは、「地域に、かっこいい大人がいること」の大切さです。
地域の課題に真正面から向き合い、新しい仕事や活動を生み出している大人の姿を見て、子どもや若者が「地元って面白い」「ここで働くのもかっこいい」と思える。
若者を無理に地域へ引き留めるのではありません。一度東京や海外へ出てもいい。それでも地域と心でつながり、いつか戻って挑戦したり、外から地域を支えたりする。
観光客やふるさと納税だけではない、もっと継続的な「関係人口」を育てるという発想です。
■地域づくりの土台には「水環境」がある
私は金岡先生に、もう一つ質問しました。
自然環境や生物多様性、地下水などは、経済的な価値が数字として見えにくいものです。こうした環境の価値を、地域課題の解決と経済的価値を両立させる「共通価値の創造=CSV」の中に、どう位置づけていくのか。
先生からは、熊本では水環境の保全が、地域づくりや産業、人材育成を考える上で大きな土台になっているとのお話がありました。
これは、とても印象に残りました。
地域資源を「活用する」ことばかりに目を向けるのではなく、その資源を生み出している自然環境そのものを守らなければ、持続可能な地域経済もありません。
豊かな森林、水、農地、湿地、海に恵まれた北海道にとっても、重要な視点だと感じます。
ちなみに「地域未来創造塾」は、北海道ではまだ開催されていないとのこと。基礎自治体を基本に、地域の企業、行政、金融機関などが一緒になって取り組む仕組みです。
北海道でも挑戦してみたい自治体があれば、ぜひつながってほしいと思います。
■YAMAGA BASE――廃校を「地域の負債」ではなく挑戦の拠点へ

続いて訪問した山鹿市のYAMAGA BASE。
1992年築の旧千田小学校を再生し、農業、観光、教育、移住、雇用などをつなぐ地域の拠点として活用しています。
一部施設ではQRコードによる無人開錠を導入するなど、維持管理費や人件費をできるだけ抑える工夫も行われています。
また、季節ごとに異なる農業や観光などの仕事を組み合わせる「特定地域づくり事業協同組合」を設立。マルチワーカーを地域の事業者へ派遣し、UIJターンによる人材の受け皿にもなっています。
まさに熊本大学で伺った「地域課題を新しい価値へ変える」という考え方が、現場で実践されていました。
しかし、ここではその難しさも率直に伺いました。
廃校を賃借するのではなく買い取って活用しようとしたところ、行政物件特有の未登記という問題に直面。さらに取得後には、登録免許税、不動産取得税、固定資産税などの負担が発生しました。
地域再生という公共的な役割を担っていても、制度上は一般の不動産取得と同様に扱われます。
「地域のために何とかしたい」と立ち上がった一人の民間事業者に、これほど多くの責任とリスクを背負わせてよいのだろうか――。そんな疑問も感じました。
現在は、一企業の志だけに頼るのではなく、行政、大学、企業、地域住民などが役割を分担する「実行型コンソーシアム」を目指しているとのことでした。
北海道でも、これから廃校や使われなくなる公共施設が増えていきます。
私自身、地域の貴重な歴史資料を守るNPO法人から、新たな施設を取得した際の税負担について相談を受けた経験があります。地域のために公共的な役割を担う人たちの挑戦を、制度や税制が逆に阻んでいないか。北海道でも改めて検証したい課題です。
■佐賀県――行政職員自身が「チェンジメーカー」に

翌日の佐賀県で印象に残ったのは、行政の役割そのものを変えようとしていることでした。
目指しているのは、決められた事業を執行するだけの職員ではなく、地域に入り、人と人をつなぎ、新しい変化を生み出す「チェンジメーカー」です。
県外のNPOを地域へ呼び込み、その知恵や人材を地域課題の解決につなげる取組も進められていました。
人口減少が進めば、行政だけであらゆる公共サービスを担い続けることは難しくなります。
だからといって「行政にはできないから地域でやってください」ではありません。
行政自身が地域へ入り、住民、NPO、企業などと一緒に考え、それぞれの力を引き出していく。
職員の皆さんが生き生きと仕事をされていたことも、とても印象に残りました。
■自然には「市町村境」がない――広域で環境を守る

さらに佐賀で考えさせられたのが、自治体の境界を越えた連携です。
鹿島市などの取組では、干潟や水環境、生態系といった自然環境を、一つの自治体だけの資源として捉えるのではなく、周辺自治体や地域のさまざまな主体が連携し、守りながら地域づくりへつなげようとしていました。
自然には行政界がありません。
川も、水も、森林も、生きものも、市町村の境界線で止まるわけではありません。
一方、人口減少が進めば、それぞれの自治体で専門人材や財源を確保し、単独で自然環境を管理していくことは、ますます難しくなります。
だからこそ、自然環境の保全も、自治体を越えて考える。
熊本で伺った「水環境を地域づくりの土台にする」という考え方と、佐賀で見た「自然環境を広域で守る」という実践が、私の中では一本の線につながりました。
■人口減少を、新しい地域のあり方をつくる契機に
熊本の「ローカルイノベーター」と、佐賀の「チェンジメーカー」。
言葉は違いますが、共通しているのは、地域課題を「衰退の証拠」として捉えるのではなく、新しい価値を生み出す出発点にしようとしていることです。
人口減少対策は、人口を取り合ったり、若者を引き留めたりすることだけではありません。
一度地域を離れた人が「ここで挑戦したい」と戻ってきたとき、その挑戦を応援できる地域であること。
地域の内外から、人、企業、大学、NPO、金融機関などが関わり続けられること。
そして、挑戦する個人だけに責任を背負わせず、行政も一緒になって支えること。
さらに、そのすべての土台にある自然環境を、行政区域を越えて守っていくこと。
人口減少が著しい北海道だからこそ、「縮むことへの対応」だけではなく、地域課題を新しい価値へ変える共創の仕組みをつくっていきたい。
熊本・佐賀で得た学びを、これからの北海道の人口減少対策、地域人材の育成、自然環境保全、そして地域を支える制度づくりへとつなげていきたいと思います。
この記事の投稿者
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広田まゆみ
函館生まれ札幌育ち。現在は、白石区在住で、北海道議会議員として活動中。
札幌市立向陵中、札幌西高、北海道大学を卒業後、北海道庁職員として、日高管内浦河町で生活保護のケースワーカーが最初の仕事です。
その後、労働組合の女性部長なども経験し、自分探しが高じて、11年務めた道庁を退職。
空知管内の雨竜町に移住します。
約8年、農家民泊や、農作業ボランティアのコーディネートなど都市と農村の交流を推進するNPO活動に従事した後、道庁の労働組合時代のご縁で、政治の道を選びました。
だいたい10年ごとに大きな転機があった私ですが
これからの人生の時間は、社会企業家的地方議員を100人つくることをはじめ、こどもたち、若い人たちを応援することに集中したいと思っています。
プライベートでは、気ままなひとり暮らしを満喫中。
大の温泉、銭湯好き。
チャンスがあれば、エネルギー独立型のエコ銭湯を経営してみたい。
完全なワーカホリック、働きすぎ人間ではありますが、最近は、ヨガにはまっています。
地域のヨガサークルで週1回教えられるような70歳になってたら嬉しいですね。
他には、着物、ヨガ、旅、ハガキ絵、「館」めぐり、そして、やっぱり、北海道の未来のために働くことが大好きです。
ドラッカー読書会FT。91期エクスマ塾生。


